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【信用調査】地面師暗躍(平成29年10月29日産経新聞より)から学ぶ

過去の遺物と思われていた「地面師」。最近、大手ハウスメーカーが土地所有者を装った相手に、60数億円をだまし取られた事件が報道され、またぞろその悪事が顕在化しています。恐ろしいのはその手口が相当巧妙になり、不動産取引のプロ中のプロが、こぞって手玉に取られてしまったこと。この事件から何かを学ぶことが出来るでしょうか?

20171029地面師暗躍産経

偽造をその場で見破るのはまず無理

いくつかの記事を読んでみますと、印鑑証明書・本人確認書類(パスポート)が偽造されていたことが明らかになっています。ところが、印鑑証明にせよパスポートにせよ、素人には真贋を見分ける基準などあるはずがありません。そこで役所に問い合わせてみました。

「印鑑証明が偽造かどうか、どうやったらその場で見分けがつくのか?」
「その場から役所に電話したら、偽造か否かを教えてくれるのか?」
じつは役所も、そんな事態はまったく想定していないようです。対応してくださった印鑑証明書の担当者はいいます。

「印鑑証明書をコピーしたら『写し』と浮き彫りになりますよ」
「本物の印鑑証明とコピーは紙の手触りが全然違ますから」
そんな噛み合わないやりとりに私は、
「紙幣の手触りならまだしも、印鑑証明の紙質なんて分かりませんよ。滅多に手にしないですもの」

どうやら偽造を見破る方法などなさそうです。
超高性能なプリンターが出回っている昨今である一方、まさか印鑑証明や旅券が偽造されるはずなどない、という役所の意識と現実との間に大きなギャップがあるのも事実。しかしそれはあたりまえです。こんな事件が、めったに起きるはずがありませんから。ところが「偽造されるはずなどない」という前提があるからこそ、予期せぬ事件がおきてしまうのです。「想定外だった…」と悔やんでみたところで後の祭り。

「周辺での聞き込み」なんだかんだ言っても一番有効

さて、不動産を買い受けたハウスメーカーが、土地の測量を始めたところ、
「お宅は何の権利があって測量なんかしているんだ!」真正の所有者からとがめられた。憤り慌てた担当者が、売却人の人定を周辺で尋ねたところが、「全くの別人だよ」と言われて真っ青になった、というのが発覚のきっかけだったそう。
つまり逆に考えると、本人確認資料(パスポート)を持って周辺で聞いて回れば、「別人だ」という言質が取れた可能性がある、というのがこの事件から学べることなんだと考えます。非常にシンプルです。
ハウスメーカーの担当者が周辺に住む人を何名がつかまえて、人定を行えば被害はここまで広がらなかったかもしれません。もし自社ではそんなこと聞き込みにくい・・・というなら、調査会社を使って確認するといった手だてもあった。「絶好物件だから早く買っちゃいたい」そんな急いた気持ちと、数十億円という金額とを、もっと天秤にかけてもよかった。世の中が複雑になるほど、古典的でも当たり前な方法が威力を発揮するのかもしれません。

当事者には司法書士や不動産のプロが集まっても、こうした事件が起こってしまいました。用意周到に事が運ばれていたのは間違いありません。
とはいっても、「それにしても・・・」という思いを抱くのは、果たして私だけでしょうか。

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