身上調査は廃れ、今や手掛けられる人がいなくなっている

平成バブルからしばらく、大企業は終身雇用制でした。入社に際しては、学生に身上調査を実施するのが当たり前。昭和62年(1987年)に銀行から内定をもらったとき、私も当然調査の対象になったようです。どういう報告書を書いてくれたかの、ぜひ見たかったですね。そのときはまさか自分がこの業界に関わるなんて思ってもみませんでしたが(苦笑) すでに帝国データバンクは「身上調査」を取止めていましたので、中小調査会社は世間同様、身上調査の大大バブル状態。当時「採用調査」を専門にする会社も数多くあったと先達から聞かされたことがありますが、終身雇用制の崩壊につれて、「身上調査」はすっかり廃れてしまいました。当然のなりゆきというか、採用専業調査会社もかなりつぶれてしまったそうです。今では逆に、『身上調査を頼みたくても、頼める調査会社がないよ』 先だって、ある取引先から聞かされました。細々とですが、「採用調査」を請け負っている弊社にしたら、久しぶりに到来したビジネスチャンスなのかもしれません(笑)

きっかけは学生運動

そもそも60年安保のころから、企業が学生の身辺チェックを盛んに行い始めたと聞きます。私が学生だった80年代、学生運動は全く下火。なかったとは言いませんが、多くの学生は「主義主張」なんかどうでもよく、金を稼いじゃ消費するのに忙しいといったお気楽ムード蔓延の時代。しかしそんな頃であっても、人事部には「学生運動、華やかりし時」を知る社員が中堅・幹部であったわけで、身辺調査の重要性をよく知っていました。ですから「身上調査」という保険をかけて、企業防衛を人事部なりに構築していたのでしょう。ほとんどの学生は調査したところで、問題なんかないんですから。
とはいえ世の中は激変しました。我々世代が中堅になり、終身雇用制も希薄になる。すると「身辺調査なんか必要なのか?」という風潮に変わってきます。また個人情報という観念が台頭してきたことも、大きいですね。企業を取り巻く収益環境はバブル時代と一変してしまい、身辺調査になんかカネをかけるのはやめようとなったわけです。

しかし業種によっては・・・

しかし運輸業、一部の製造業などは依然実施しているようです。昔の過激な学生運動がもたらした大混乱を社内で引き起こされたら・・・と逆算すると、一部の不穏分子によって「命の安全(交通・食)」を脅かされたらたまらない。そういう考えが根強く残っているからといえるでしょう。
この業界で長年働いていると、履歴書を改ざんするくらいならまだ可愛いもんで、うそでっち上げのオンパレードという人を調査の対象にすることは、少なくありません。たしかに、個人情報保護は尊重されなければいけません。しかし個人情報保護を「隠れ蓑」にして、悪事を働く人がいることも事実。「身上調査」の件数は少なくなりましたが、私は意義ある仕事として、必要とされる限りは会社の業務として続けていきたいと考えています。