書籍の商業出版

平成28年11月、税務経理協会より「会社謄本 分析事始」を出版しました。

前作「元銀行員の探偵が教えるヤバイ会社はこう見抜け!」(こう書房)出版から約10年。商工会議所や取引先で講演してきた内容や新しいトピックスを、豊富に取り入れてまとめました。

税務経理協会の編集担当者が、私の講演にお越しいただいたことが、2冊目の本を出版するきっかけでした。

「会社謄本の読解」をテーマにした書籍や講演が皆無、という事情も大きかったでしょう。講演会場で担当者と名刺交換してから約1年、ようやく形になりました。

月刊 BUSINESS LAW JOURNAL (2017年3月号)の書評で、第1位に選出

本を出版してから2カ月、私にとっては極めてうれしいハプニングが起きました。

BUSINESS LAW JOURNAL“という企業法務担当者や弁護士が購読する月刊誌があり、2017年3月号の「辛口法律書レビュー」という連載コーナーで、突然書評が掲載されたのです。

私からはもちろん、出版社からの働きかけもありせんでしたから、驚きました。「企業法務パーソンが私費であっても買うべき本」という観点で第1位に選出されましたから、またびっくりです。

なだたる法曹界の先生方を抑えての評価は、恐縮しきりですが、とにかく事故を未然に防ぐためのノウハウ集に徹したことが良かったのかもしれません。

読んで退屈しない構成を心掛ける

会社謄本は、企業の断片情報を端的にまとめた資料でしかありません。

「あとがき」にも書きましたが、会社謄本など漫然と眺めても、無味乾燥な情報の羅列でなんの面白味もないのです。

退屈なものは誰も興味を示しません。

とはいっても、会社謄本がどれだけ退屈な資料であろうと、「社会」の一機能として立派に存在しているのですから、会社謄本を社会から切り離して解説するのは、不自然です。

そこで私は、商工会議所の会社謄本読解セミナーでお話しする手法を心掛けて、書き進めてまいりました。

それは、会社謄本そのものの解説をするのではなく、世間を騒がせた事件とその渦中にあった会社の謄本から、どのような情報が読み取れるか?という構成です。

人々が関心を寄せた事件は、新聞の社会面を拝借させてもらいました。

「会社謄本というフィルターを通して三面記事を疑似体験」してもらえれば、会社謄本にどれだけ重要な意味合いが含まれているかを、実感してもらえるはずだと。

何年にもわたって商工会議所から、会社謄本のセミナーをリクエストしていただけるのも、会社謄本の解説に「ライブ感」を持たせて、感情に訴えるからだろうと思っています。

会社謄本と他の資料を突き合わせて数字を推測する

この本を書くにあたり、新しい試みをいたしました。

従来は、
〇現在謄本と閉鎖謄本の情報を、時系列にして比較することで、会社の商道徳を見極める
に注力していました。しかしそれだけではなく、
◎現在謄本と政府統計を組み合わせることで、売上高などの財務データを推測する
ことも、まとめてみました。

ご存知のように、会社謄本には「資本金の額」以外、決算書に出てくるような勘定科目は登記されません。

私は、会社謄本を見てはいつも「売上や現預金高、従業員の数などがわかる方法がないものか?」と思っていました。

もちろん、そんな都合の良い方法は見つかりませんが、ある程度見当をつけられる方法に行き当たりました。

政府では数多くの統計が好評されています。

この政府統計と会社謄本を組み合わせることで、具体的な数値をイメージできるのです。

ただの第六感で「この会社は〇〇億円位の売り上げ規模かな?」と思うより、統計を引用した方が断然客観的。そうした手法をこの本の「第3章」に収めました。

会社謄本のわずかな変化からも、反社会的勢力者の痕跡を嗅ぎ取る

広義の意味では、詐欺を働く集団も反社会的勢力者ということになりますが、狭義にせよ広義にせよ、反社会的勢力者との接触は日頃から断っておかねばなりません。

しかし、こちらが知らないうちに接点を持っていたという可能性も否定しきれないでしょう。

そこで、自社でも出来る簡易な反社チェックのやり方と、その下敷きとなる考え方を、本書2章11.及び12.では「役員登記日から推測する反社チェック」「目的欄から会社の善し悪しを読み解く」として、まとめました。

昨今は業法に、反社会的勢力者には役所の許認可は下さないようになっていますが、そうした法律の考え方と会社謄本の登記とを並行して分析し、簡単にスクリーングできる方法を図示しています。

そうしたことを意識して書いたこの本が、多くの方に手に取っていただけることを願ってやみません。

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