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【信用調査】地面師暗躍(平成29年10月29日産経新聞)から学ぶ ③

会社謄本から見えること

この事件では大手企業から巨額のカネを騙し取るため、ヒト(替え玉)・モノ(偽造書類)がでっち上げられました。振り返ってみれば、つじつまの合わないことが出てくるわけですが、最初から詐欺と分かっていれば、誰だって詐欺の被害に遭うわけがありません。そこが詐欺たるゆえんです。とはいえ、この類の事件はこれからも起こりうるでしょう。地面師が駆使した手口から、我々は何かを学ばないと進歩がありません。前回は不動産謄本の形式、前々回は人定を近隣で確認、をまとめましたが、今回は会社謄本から考察してみます。

○地面師暗躍事件から学べること○
(1)60数億円の取引額に相応しい法人と代表取締役なのか?
(2)代取住所がワンルームの賃貸物件でいいのだろうか?
(3)実質的経営者がなぜいるのか?

海喜館謄本2

代取の住まいと取引ボリュームの釣り合いが取れているか?

舞台となった不動産業のI社は、資本金が1000万円で女性が代表取締役を務めている。いくつかのルポルタージュによると、本店住所は元議員の事務所。そして代取ではなくオーナーが実権を握っているという。いわゆる実質的経営者が存在する。代取住所を調べてみると、果せるかな家賃10万円のワンルームマンション。代取の持ち物でもない。単純に、I社の会社規模・代取住所の家賃・実質的経営者の存在・60億を超える不動産売買、の4つを合わせ見ると非常に歪な構図が透けて見える。もちろんこの件に関して、第三者には窺い知れない現場事情があることでしょう。しかし会社謄本を読み込んでみると、なにか釈然としない感が残るのも事実ではないでしょうか?

実質的経営者がいる法人には要注意

制度の瑕疵をつけば、本店登記など好き場所に設定可能。I社が元議員の事務所に本店を置くことはできるのです。それも議員の承諾あるなしに関係なく。売買取引の際に、どうして元議員事務所にこの会社に本店があるのか、当事者から確認を取っていたのか?は一つの与信行為でしょう。
また、オーナーが会社経営を誰かに任せる際、任された人、つまり雇われ社長の住まいが極めて貧弱な場合には、要注意というのが私の見解です。次の図をご覧ください。

資本金と雇われ代取住所との相関図

オーナーが経営にタッチしなければ、経営を任す人は有能であるはずです。そうでなければ資本を太らせることはできません。有能な人材であれば、収入も補足するはずですし、収入に応じて住まいだってそれなりになるはず。逆に考えると、貧弱な住居の雇われ代取というのはおかしな話です。今回の事件、I社の代表取締役は60何億の不動産取引の当事者としては、貧弱な気がしてなりません。外部の人間にはわからない事情があったことは想像に難くありませんが、それにしても与信の基本に立ち返り会社謄本・不動産謄本を分析してみると、どこかで事故を防げるタイミングがあったのではないか?と思わざるを得ない事件です。

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