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【信用調査】地面師暗躍(平成29年10月29日産経新聞)から学ぶ ②

先日ドラマ「相棒」で、地面師を扱ったストーリーがありました。有名企業を相手に巨額の資金が地面師に騙し取られた衝撃が、人気ドラマにさえ影響を与えるのだ、と思いしらされます。さて、11月29日に投稿しました「地面師暗躍」に続き、考察を重ねました。

○地面師暗躍事件から学べること○
前回:顔写真を近所で聞き込み、真正の所有者かを確認。
今回:狙われやすい不動産には共通点がある ①所有権移転なし②抵当権設定なし

2つの事件に共通した不動産謄本

大手ハウスメーカーやホテルチェーンを手玉に取り何十億もの金を騙し取った地面師たち。この輩が舞台に選んだ五反田と赤坂の不動産登記簿を取得しました。バブル崩壊後、曰く因縁のある不動産登記簿を数多く見てまいりましたが、その特徴として(1)所有者はコロコロと変わる、(2)抵当権は設定・抹消・変更が繰り返される、これが典型例。今回、この2つの登記簿を手にするまで、設定・抹消・変更が繰り返された謄本にちがいないと、勝手な想像をしていました。しかし、登記情報提供サービスで2つの登記を見ると、想像とは真逆で所有者は何十年も変わらず、抵当権はおろか乙区そのものが存在しない、まったく動きない不動産謄本でした。
海喜館謄本

登記の変動が全然ないから狙われる

ド派手な架空売買の舞台となった不動産にしては、登記情報が少ないことに驚きました。念のため、オンライン化前の不動産謄本を郵送で取り寄せましたが、これも拍子抜けするほど登記情報がありません。表題部と所有者だけの謄本です。とりわけ赤坂の謄本は「表題部」と「所有者」を合わせてもたった1枚。五反田の謄本にしても似たりよったりで、所有権移転の原因が「平成2年 相続」とあるのみ。
さて「地面師の仕込み」と「動きのない登記」から何が推測できるでしょうか?今回の事件は「所有者になりすまし」がポイントです。つまり真の所有者が人前に出てこない環境にあればあるほど、「所有者になりすませる余地が発生する」という着眼点ではなかったか。となると、(動きのない登記)≒(なりすましに絶好な環境)と言えないか?

騙し取れる「不動産」を綿密に市場調査

この2つの事件や、逮捕された人物が他で企図した事件では、所有者が高齢、相続登記がされていない、といった特徴があるようです。今では考えられませんが、「家を新築しても登記なんかしない」ということはありました。一言でいえば「登記する金が勿体無い」というのが理由です。また、相続が発生しても、相続税を税務署にちゃんと納付してあれば、所有者登記が亡くなった人のままであっても文句を言われることはありませんでした。そんな「登記がほったらかし」に近い不動産だということは、所有者の管理が甘くなっていると考えられるわけです。
赤坂や五反田駅周辺は住宅地とは言えません。いきおい所有者の住まいが遠方、土地の管理は人任せ、そんな事情もあるでしょう。近頃は「空き家」が社会問題化してもいる。こうした背景を併せて考えると、地面師は「登記変動のない不動産」を「所有者になりすましやすい物件」として、目途をつけていたに違いありません。
こうした被害に遭遇しないために、(1)前回は周辺で所有者確認をする、(2)今回は不動産謄本の形式から「なりすましやすい物件か?」に注意する、これが事件から学べる教訓ではないかと考えます。

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